愛しているから 好きにしろ
 
 「お前、本当に病がひどいな。早く結婚してその病気治した方がいいぞ」

 「そうか。うちは、爺さん、婆さん、屋敷の使用人、俺、みーんな同じ流行病にかかってる。お前だってかかってるだろ、気づいてないのかよ?」

 「はー、言われてみればそうかもな。ウチの嫁もその病にかかってる。まるで妹みたいにかわいがってる。どうなってんだろな?」

 「これで、ミツハシフードサービスは安泰だ。俺と人たらしのあいつ」

 「ったく。人たらしか。全員流行病にかからせるわけだな」

 「そういうこと」

 奈由を明日まで休みにしてくれと頼んで電話を切る。

 側で話しているのに目を覚まさない。

 結婚を承諾してくれたことに我を忘れて、彼女を抱き潰してしまった。

 彼女も拒むどころかすがりついてくるから、自制が効かなくなってしまった。

 こんなことは、この間転職の時のゴタゴタ以来だ。

 やっとだ。

 そう、こいつと付き合うまでも大変だったが、結婚までも同じくらい大変だった。

 別に別れそうだったとかいうことはまったくないのだが、自分の人生を生きろと言ってしまったことを何度後悔したことか。


 
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