愛しているから 好きにしろ

家族への挨拶

 
 今日、とうとう先輩が実家に挨拶へ来てくれることになった。

 「奈由ー、そこ雑巾で拭いて綺麗にしてちょうだーい」
 母は、朝から大掃除。
 今更遅いと思うけど。

 「奈由、三橋さんに会うの久しぶりだよ。あれからさらにイケてるいい男になったの?」

 割と近くに住んでいる姉が子供を連れて遊びに来ている。
 大学時代、一度先輩に会っていて、イケメンと騒いでいた。

 夜には旦那さんも会いに来る。
 姉は、研修先で出会った人と交際して、たまたま実家近くの支店へ彼が異動になった時結婚した。
 去年、子供が生まれて、父と母は孫育てに忙しい。

 帰ってきて、最初にやったことは父を問い詰めることだった。

 昨日の夜、父が仕事から帰ってきたので、早速問い詰めた。すると悪びれもせずさらりと答える。
 
 「ああ、三橋君ね。最初に会ったのは、お前が就職したとき。何でお前に内緒で来るのかなと思って聞いてみたら、お前に言うと逃げそうだからとか言ってたな。まあ、私も会社名と将来社長と聞いて、そうかもしれんと思ったから黙ってた。というか、続くとは思ってなかったがな。ははは」
 
 ……なんですって?
 
 「次に来たのは、お前が転職したとき。もう、笑うしかないよな。おじいさんもきたんだよ。本当にお前に内緒で何やってんだろうと思ったが、とにかくいい人でね。旨くて高い酒持ってくるし、拒めないだろ」

 ……あのね。お父さん。私をお酒で売り渡しましたね?

 
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