愛しているから 好きにしろ
洗い物の手伝いをしていると、三橋さんが横に来た。
「帰り、俺今日10時だけど何時まで?」
「9時までです。」
「危ないから一緒に帰ってやるよ。あがって片付けたら声かけろ。賄い出してやる。食べて待ってろよ。」
「え?」
「子リスだから狼にすぐ食われそうだ。ひと飲みペロリだからな。」
すれ違うとからかっていじられる。でもよく分からないけど、私のこと心配してくれてるのかな。
「子リス、帰るぞ。」
最早、ちゃん付け消えてる。促されて歩き出す。
「少しは覚えたか?篠宮に教わったんだろ?」
「はい。篠宮さんとは親しいんですか?お名前で呼ばれてましたよね。」
「まあ、同じ学部でゼミも一緒だからな。」
眠くてボーッとして、暗がりの電柱へぶつかりそうになった。
急に手を引かれる。
「おいっ!お前、ほんとに大丈夫か?」
「ちょっと疲れてしまって。大丈夫です。」
三橋さんは手を引っ張ったまま歩き出す。
「しょうがねーな。子リスはおねむか。全く。」
そのままエレベーターに乗せられ、部屋の前まで連れて来られた。
「また、明日な。携帯貸せよ。」
そう言うと、携帯のロックを外すように言われて、気づくとまた携帯を手のひらに載せられた。
「俺のアプリと番号入れといたから、何かあれば連絡よこせよ。……子リスおやすみ。また明日な。」