愛しているから 好きにしろ
「……お父さん」
私はびっくりしてお父さんを見た。
娘を売り渡したかと思ったら、そうじゃなかった。
先輩のお父様が頭を下げた。
「大事なことを後で説明してしまい、大変申し訳ございませんでした。もちろん、長男は納得しています。私達は、年の離れた兄弟の二人を一緒に遊ばせてやることがあまりなくて、弟である達也は両親に育ててもらったようなものです。そのせいで、両親はもともと孫である達也をかわいがっていましたが、達也の生来の性格を見極めて、後継者にしたいと中学へ入ることには相談されてました。達也の兄である長男はすでに子供もいますし、達也のすごさもわかっていて、納得しているのです。親が言うのも何ですが、達也は親父に似ています。そして、奈由さんは母に似ている。運命だと思います」
先輩がお父さんに頭を下げた。
「申し訳ございません。このことはグループ内の秘密でもありました。また、私が結婚しないと発動しないことになっていて、結婚が決まったので離籍することが決まりました。奈由さんのことは命に代えても守ります。幸せにしますので、どうか私にください」
「そうでしたか。いや、ご丁寧にありがとうございます。わかりました。どうか奈由をよろしくお願いします」
父が頭を下げた。
「達也さん。奈由は自分で抱えてしまうところがあるの。優しいからそういうところも、心配なんです。どうか、よろしくお願いしますね」
母も先輩に頭を下げてくれた。
お姉ちゃんは涙を浮かべて見てる。そうだよね。
私、泣いて喜ぶべきなんだろうけど、なんだろう、複雑なんだよね。
今初めて知ったことが結構な衝撃で。