愛しているから 好きにしろ
 
 外商さんが言う。

 「メイク道具も美容担当のほうからご案内させて頂く予定です。そちらはまたお日にちを改めまして」

 「……はあ」

 ぐったりしたところで、今日はこれまでにといって、帰って行った。

 時計を見ると12:30。お腹すいたー。

 祐子さんに促されて、下のダイニングに入る。

 美味しそうなランチが並んでいる。

 おじいさまとおばあさまはすでにスープを飲み始めていた。

 「奈由、かわいいのう」

 「奈由さん、そのワンピースとてもお似合いよ。それに、なんだかとってもステキになりましたね。よかったわ」

 「……馬子にも衣装です」

 「そんなことはないぞ」

 「そんなことはありません」

 合唱する二人。
 ありがとうございます。

 その後、午後に入り、今度は和服のリカちゃん人形。

 これがまた、すごくて。
 鏡に映る自分が信じられない。

 お父さん、お母さん。私、やばいところにきてしまったかも知れません。
 ごめんなさい。やっていけるかどうか、心配です。

 全部説明を受けて、夜近くなってあらかた【結納とは】という講義は終了した。
 三時のアフタヌーンティーが美味しかったので、まだそんなにお腹はすいてない。

 和室で目を閉じてぐったりしていると、ノックの音がしてはいどうぞというと誰か入ってきた。
 「祐子さん。終わりましたよー」
 
 私が答えると、返事がない。
 すると、私の身体を後ろから抱きしめる手。
 この香り。

 「先輩?」
 「……奈由。お疲れ様」

 
< 119 / 151 >

この作品をシェア

pagetop