愛しているから 好きにしろ

達也の会社Ⅰ

 
 「平野。まだ原稿書いてるのか?時間大丈夫か?」

 榊社長が私の後ろでに近づき小さい声でささやく。


 「社長、平野さん最近半休多くって、仕事に支障が出てます」

 隣に座る水川由美子さんが榊社長を見ながら言いつける。

 「ま、平野はお前と違って、一発でOKの原稿が最近多いし、取材さえキチンと行ければ大丈夫だと思うぞ」

 直属上司の高瀬課長が言う。

 由美子さんが、じとっと課長を見る。

 「平野さんは、ちょっと家の事情でしばらく半休が多くなる。そのうち本人からキチンと説明があるだろうから、もう少し許してやってくれ。頼むよ、水川さん」

 社長が口を挟む。

 「え?は、はい」

 赤くなる水口さん。はー。


 「平野、大丈夫か?疲れてるだろ。最近痩せたよな」

 高瀬課長が心配してくれる。

 「平野そうなのか?」

 社長が言う。

 「え、そうですね。ちょっと忙しいですけど、もう少しだから頑張ります」

 「平野。具合悪くなるようなら休め。そうじゃないと、俺があいつに殺される」

 社長がもぐもぐ小さい声で言う。


 課長がじっと見ている。

 課長は何か気づいているけど、聞いてこない。

 いい人なんだよね。信用してくれてるというか。


 「社長。そろそろ説明してください。聞こえないふりも疲れますから」

 高瀬課長も小さい声で社長に言う。


 「本当にご迷惑おかけしてすみません」

 とりあえず謝っておこう。



 今日は午後からなんと達也君の会社へ行くの。

 なぜだか知らないけど、とにかく着替えて来いと言われて、セミフォーマルのこの間のワンピースを持ってきた。

 あとで、更衣室で着替えて行く。
 髪は自分で適当にまとめる予定。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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