愛しているから 好きにしろ

 眼鏡のフレームがキラーンと光るすっとした長身の男性。

 「はい、こちらこそよろしくお願いします。平野奈由です」

 「本部長、行きましょう。とりあえず、氷室商事の社長にご挨拶して下さい」

 一緒にエレベーターに乗って行くと、応接室へ案内された。

 氷室商事って何?一緒に入らない方がいいと思うんだけど。

 
 「遅くなり申し訳ございませんでした」

 達也君はそう言いながら、私の手を後ろ手に引いて入っていく。

 「久しぶりだね、達也君」

 目の前には五十代くらいの男性。お父さんくらい?隣には、綺麗な茶髪のお嬢様。

 「あれ、そちらは?」

 「彼女は、近々婚約発表をする予定の婚約者です」

 「平野奈由です」

 とりあえず、深々とお辞儀をした。

 最近お辞儀の練習もさせられてる。

 成果を見せねば。

 隣のお嬢様が睨んでる。

 はい、私が虫除けです。

 ごめんなさい。

 
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