愛しているから 好きにしろ
 
 「そうか。ほら、瞳。だから、俊樹の言ったとおりだっただろ。これで諦めが付くか?」

 「……お兄様が言っていました。まだ、結婚するかどうかは聞いていないって。急に嘘ついてるんじゃないでしょうか?」

 「俊樹から聞いていたんだよ。達也君が大切にしている人がいて、その人以外は目もくれないって有名だって。なのに、パーティーで君に助けられてから、瞳はとにかく君のことばかり言うからね。これは、諦めさせるにはこういう手しかないと思ってさ。すまないね、平野さん」

 「お父様。どうして私じゃだめなのか、伺いましょう」

 「瞳。恥ずかしいまねはやめなさい」

 「瞳さん。あなたのような、若くて美しい人にはたくさんお相手がいるでしょう。私はすでに売約済みでね。申し訳ないが、お許し頂きたい。あなたがだめとかじゃないですからね。瞳さんは俊樹さんにも似てるね。美人だ」

 ジロッと達也君を見る。
 馬鹿じゃないの。
 褒めてどうするのよ。
 女の子は褒められたら諦められないの。

 「あの、瞳さん。初対面で申し訳ございません。私もこんなことになるとは知らず、入ってきてしまいました。ただ、結納は準備が大変で、三ヶ月前から準備していまして、今月の終わりに式をする予定なのは本当です。すみません」

 瞳さんは私を見て、あっけにとられている。

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