愛しているから 好きにしろ

 「平野さん、達也君おめでとう。そうか、とうとう。ということは、色々会社のことも進む予定かい?」

 達也君がソファーでコーヒーを一口飲むと、頷いた。

 「そうです。予定通りに進むと思います。氷室商事は専務が昇格しますか?」

 社長が頷く。

 「そうだな。陽樹は副社長に、俊樹は常務辺りになるかもしれない。平野さん、ウチはこちらと親しくしているんだよ。親戚に近い。平野さんもこれからよろしくね。次男の俊樹はこの会社にしばらくいたんだ。俊樹の嫁さんもこの会社で秘書をしていた人でね。今はウチの会社にいるけどね」

 そうだったんだ。なんで事前に言ってくれないのかな。

 「奈由。結婚が決まったら最初にご挨拶へ伺う会社だよ。俺の今後も、氷室社長やご子息と連携して取引が続いていく。実はウチの現社長の妻、つまり叔母が氷室の親族。社長の奥様と親戚なんだ。遠縁なんだよ」

 なんかよくわかんないけど、みんな親戚なのね。

 「どうぞよろしくお願いします。何も分からないので、ご指導下さい」

 頭を下げる。

 「うん、綺麗で謙虚な婚約者だね。達也君よかったな。婚約者を会長がかわいがっていると聞いていたから、瞳など入る隙はないとわかっていたんだが、親馬鹿でね。本人が納得しないとダメだろうと思って。無理を言ってすまなかった」

 瞳さんは、唇をかんでじっとしてる。

 可哀想。

 なんかもう少しやり方ってものがあったでしょうに。

 
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