愛しているから 好きにしろ
 
 「瞳にとっても大事な友達になりそうだ。俊樹の嫁さんも頭の回る接客業出身の喫茶店のお嬢さんだが、素直に瞳が言うことを聞かないんでね。同い年の彼女は瞳を変えてくれそうだ。助かるよ、達也君」
 
 「はー。奈由はこうやって周りをみんな自分の手の内に入れてしまうんです。こっちは心配でしょうがない」
 
 「そうだな。これは、大変だ。私も若かったらおちてしまったかもしれないよ。ははは」


 私は、瞳さんと次の約束までするくらい仲良くなってしまった。

 可愛らしい人なんだよね。

 それでいて気が強くて詩乃みたい。

 仲良くなれそう。よかった。


 「本部長。未来の奥様はすごいですね。部屋を出てくるときにあの瞳さんが平野さんとにこにこ話してました。もしかして、また噂の通り、懐柔したんですか?」

 樋口さんがエレベーターまで二人を見送った後、達也君につぶやいた。

 噂の通りって何?何の噂?

 
 「……樋口。そのうちわかる。俺は心配で死にそうだ。このあと、社内を回るつもりだったがどうするか」

 「え?社内回るの?行きたい!静かにしてるから、付いていっていい?業務の篠田さんに取材のはなしもあるし。ついでに行こうかな」

 「奈由。お前、その格好で行くんだぞ。ばれてもいいのか」

 あ、そっか。

 達也君との関係は内緒にしてたから、まずいな。

 

 

 
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