愛しているから 好きにしろ

達也の会社Ⅱ

 
 私を会社の中に連れ回すなんて、説明しなくちゃいけなくなるし、噂になるし面倒だと思うんだよね。

 なんで、そんなことをするんだろう。
 やはり、虫除けか。

 色々考えながら付いていくと、ザワザワする。

 正確には、周りの声がうるさい。

 先輩を見る女子社員の目が、予想通りで喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。

 最初に、人事や総務を回る。

 さすがに大きな声は出さない。
 ここのフロアの女性達は、人数多いけど、観察するように見ているだけ。

 人事部長と少しお話した達也君は、私を連れて会計やシステムのフロアを早足で通り過ぎる。

 ほんとうに、人気者なんだなと痛感したのは、業務部におりたとき。

 女性がふたり彼を囲んで、本部長今日も何かご用ですか?とか、どうぞどうぞとか言って、ソファの周りを片付け始めた。


 私は呆れてとりあえず、篠田さんを探す。
 あ、いたいた。PC見ながら仕事してる。

 私は勝手知ったるの様相で、篠田さんへ向かっていく。
 「あ、おい奈由」

 先輩は女性陣へ生け贄にする。

 「篠田さん、お仕事中すみません」

 「……え?誰?」

 マジですか。
 私そんなに化けてる?
 ちょっと、ショックなんですけど。
 普段の私ってどんなよ……。

 

 

 
 
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