愛しているから 好きにしろ
黒い雲が達也君の周りに見えだして、皆一応に話しかけず、散っていく。
ああ、これじゃ資料もらえなさそうだ。
無駄足になってしまったじゃないか。
営業フロアに下がってからが地獄の始まりだった。
キャーと言う悲鳴。
何なのよ。
営業部の課長や若手、女性陣が周りを囲む。
何なの。進めないんですけど?ハリウッド俳優?
「聞きましたよ、達也さん。おめでとうございます」
「えー、いつ決まったんですか?噂は聞いてましたけど、こんな綺麗な人だったんですね。いいなー」
「達也さん。ひどい。どうして教えてくれなかったんですか?」
「そうですよ。この間だって、食事行ったとき、好きなタイプは優しくて可愛くておとなしくてとか言ってたですよね。なかなか周りにいないとか。嘘だったんですか?」
なんだと。え?今のはなし本当ですか、お姉さん方。
「……あの。達也君は、いや、三橋さんはそんなこと言ってたんですか?」
「やだー、達也君って呼ばれてるんですかー?」
「そうですよ。昼休み、女性陣をまとめて食事にたまーに連れて行って下さるんですけどー、好みのタイプはそういう人ってこの間も言ってましたよ」
「そうそう。あの、婚約者さんは、失礼ですけどそういうタイプ?お綺麗ですもんね」