愛しているから 好きにしろ

 「爺にも、一喝されたが初めて言い返した。俺は、お前がいてはじめて俺なんだ。お前がいないなら、ミツハシという会社も家も俺には必要ない。爺にはそう言った。爺はそれを聞いて黙って電話を切った」

 「ごめんなさい」

 先輩は、私の顔をのぞき込み、シーツを引っ張って、涙を拭いてくれた。

 「奈由。頼む。俺から逃げないでくれ。いくら怒ってもいい。殴ってもいい。でも黙って消えるのだけはやめてくれ。俺は自分でいられなくなる。今日、痛感した。壊れる寸前だった。いや、壊れていた」

 そおっと達也君の頭を撫でる。

 そして、キスをした。

 涙の味。

 「約束する。これからは、黙っていなくならない。本当にごめんなさい。私も達也君が好きだから、おかしくなった。聞きたくなかったことを聞いて、疑いたくないことを疑って、壊れた。お願い許して」

 先輩は、私を抱き上げると深いキスをした。

 息が出来ない。

 食べられてしまいそう。

 すぐに翻弄されて、言葉はなくなった。

 ふたりでひとつ。
 そう実感した。
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