愛しているから 好きにしろ
恐れていたことが現実化した。
奈由は姉と同居するはずが、姉と入れ違いとなり、結構いいマンションに一人暮らし。
とりあえず、バイトは詩乃の管理下だからと安心していたら、そのバイト先へ同じマンションに住む4年生がいた。
詩乃がいうには、絶対奈由に気があるという。
これは先に勝負をかけるしかないと告白し、ようやく恋人同士になったところだった。
翌日のバイトの帰り、店へ迎えに行こうとしていたら、メールが既読にならない。
何かあったのかと、念のためマンションの前で待っていたら、マンションの手前で男と一緒にいる。
しかも、向かい合って手を握られている。まさか……嫌な予感がした。
割って入ると、彼氏ということを表明しても全く揺るがない。
挙げ句には、俺のやり方でいくからさ、と宣戦布告される始末。
時期が悪い。5月に入ると俺は実家の近くへ2週間の教育実習で帰る予定だ。
奈由を1人にしてしまう。
本来なら、4年生の奴も就活で忙しくなるはずなのだが。これは油断大敵だ。
なぜかわからないが、あの自信に満ちた態度。
落ち着き払っていて、社会人にも見える。
俺の勘が、危険だと告げている。特に奈由のようなタイプはおそらくああいう手合いにはすぐに落ちる。
奈由は渡さない。心はもらったが、身体も俺に縛り付ける。
今夜は一緒に過ごすとその時決めた。