愛しているから 好きにしろ

 恐ろしいことに、叔父には子供がなく、大分前から養子を取るよりはと、ふたりして俺に狙いを定めていたらしい。
 
 運命とはこんなものかもしれないが、俺にはその仕事が楽しくて仕方なかった。

 たくさんのグループ会社をとりまとめる位置にある会社で、多くのグループ企業の人材と会い、糸を縫うようにつなげていく。

 外にも糸を広げていき、広い布地をたくさんの色の糸で縫うようなもんだ。

 俺には人を繋ぐ才能があるようだ。

 足りないのは、経済的な能力。

 経営者として簿記をはじめ、最低限の経済知識を必要とした。

 経営能力は持ち合わせている気がした。血かもしれないが。

 だから、この学校の経済学部に入った。

 
 篠宮香は、同じグループ会社の喫茶チェーン店の社長の娘だった。

 小さい頃から知っているが、気が強く女王様気質。

 俺のことを好きなのは大分前からだが、高校生の時に一度関係を持ってしまったせいで、彼女は俺に固執している。

 別な男と付き合っても、気が合わないとすぐ別れて俺の前にこれみよがしに現れる。

 俺も、深く付き合う女性を作らないようにしてきた。後ろが分かるとそれでなくても声をかけられることが多い。

 遊び相手には困らないし、本気になった場合、俺の今後を含めて考えられるくらいの相手でないと不幸にしてしまう。

 
< 27 / 151 >

この作品をシェア

pagetop