愛しているから 好きにしろ

 油断していたのもあって、最初から舌が入ってきた。

 キスがうまい。

 晴人と比べるといけないとはわかっているんだけど、驚くほど。

 翻弄されて、離れられなくなってしまった。

 彼の腕が身体にからまって、口から吸い取られてしまいそう。

 頭がぼんやりする。

 ふっと力が抜けて、倒れそうになる。

 キスをやめた先輩が私を優しく抱き留める。頬をなでている。

 「……可愛い奴。すぐに食べたい。でも今日は我慢する。俺の気持ちがわかったか?お前も自分の気持ちを見つめ直せ。」

 そう言うと、私の左手を自分の左手で握って、右手で私の肩を抱く。

 暖かい。マンションに向かって歩き始めた。

 疲れもあって、眠りそうになるのを、上からクスクス笑って先輩が見てる。

 時たま、左手をぎゅっと握って爪を立てるから目が覚める。

 そうして、ふわふわしながら家の前まで送ってもらった。

 家のドアの前でまた軽くキスされて、じゃあな、といなくなる。

 私はぼんやりしながらドアの鍵を開けて部屋に入った。

 
< 34 / 151 >

この作品をシェア

pagetop