愛しているから 好きにしろ

 「俺が彼女に、自分を見つめ直せって言ってるんだ。彼女の選択に最後は任せるよ、もちろん。無理矢理自分のものにしたってしょうがない。ただ奈由を一時の感情で口説いているわけじゃないんだ。それだけは分かって欲しい。今も無理矢理はない。大切にしたいんだ。」

 奈由、愛されてるんだね。
 よくわかる。

 これだけ大人の男性がじっと奈由を待っている。

 もちろん、モーションはかけているんだろうけど。

 なんだか、晴人が子供に見える。

 すぐに関係を持ったって言ってたし。晴人の片思いが長かったのもあるけど、三橋さん、晴人がいないの知ってるのに焦らず奈由の答えを待てるのはすごい。


 「わかりました。教えてくれてありがとうございました。お礼と言っては何ですが、妨害工作は一切しません。どちらかというと、今カレの味方ですが、奈由にはその気持ちを見せないようにしますから。」

 「原口さん。大人だね。ヒデにはもったいないな。奈由がダメなら君にするかな。」にやりと笑う。

 「……申し訳ございませんが、チーフは私のタイプではありません。」

 「そうだろうね。あはは。」

 そう言うと、鍵を開けてフロアへ戻っていった。

 私はようやく賄いをレンジに入れようと腰を上げた。

 これから、どうしよう。頭の中はそればかりだった。
 
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