愛しているから 好きにしろ

 詩乃に知られたのか。辛いな。

 私達は二年間三人でいることが多かった。

 それなのに、晴人の味方をしようとしないで、私の選択を尊重すると言う。

 
 もし、晴人が実習に行かず、ここにいるときだったらどうだったのかな。

 私もっとおかしくなってたかもしれないな。

 晴人がいないから、こうやって誰にも邪魔されず考えていられる。

 晴人はきっといたら絶対許さないだろう。

 タカヤ先輩に一度会ったときも様子が変だったし。


 悩んでそして決めることを怖がっているうちに、また夜になった。

 タカヤ先輩からは、何度もメールや電話がある。

 扉の取っ手には買った飲み物やおかゆ、ゼリーや果物などと一緒に店の賄いを詰めたパックもビニール袋に入れてぶら下げてくれる。

 ここ二日はそれで乗り切った。

 部屋には入ってこない。そういう所は本当にキチンとしてくれている。


 翌日。学校に行った。

 就職課のガイダンスがあり、インターンシップの説明や、夏休みのボランティアなど進路のことについて話を聞いた。

 「ねえ、奈由はどうするつもりなの?」

 「え?」

 「就職とかさ。」

 「うん。考えないでもないけど。本を読んだり文章を書いたり好きだからそういう仕事がしたい。」

 「あー、そう言えば言ってたね。日記とか書いてるんだっけ?」

 「うん。とりとめもないけどね。後は、本の感想とか、漫画や映画、アニメの感想とかも書く。」

 「そうか。じゃあ、出版社とか?」

 「そうだね。文章を書けるとこがいいな。自分の意見を書けるようになりたい。」

 「……奈由。そういうとこはしっかりしてるんだね。」

 「そういうとこって何よ。他はダメみたいじゃん。」

 「え?他はダメでしょ。今だってブレブレじゃん。」

 
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