愛しているから 好きにしろ
 
 むーっとしていると、また、詩乃が笑う。

 「ほらほら、子リスちゃん。ダメでしょ。」

 「……。そう言う詩乃は何になりたいの?」

 「私?OL。出来れば大きい企業の。」

 「何それ?」

 「そこそこお金もらって、おしゃれして都心に通う。結婚して育休まで取って、復帰する。」

 「……壮大な計画だね。」

 「そうでしょ。ま、今の大学じゃ入れる企業はたかが知れてる。資格でもとって少し頑張るかな。」

 「何の資格?」

 「手っ取り早く英検から。」

 「詩乃、英語得意だもんね。英文科も迷ったんでしょ?」

 「そうね。留学したかったけどそんなお金はないし、家も普通だし。大学行かせてもらうだけ幸せだからさ。」

 「詩乃ー大好き。なんていい子なんだろう。」抱きついて言う。

 抱きついてきた私の背中をポンポン叩いて撫でてくれる。

 「私も奈由が好きだよ。だから、後悔のないように、ね。チーフは大人だね。びっくりするほど。そして頼りがいのあるいい男だよ。迷う奈由の気持ちよくわかる。でも、チーフは就職活動してる?シフト多くてどうしてるんだろ?」

 そう言えば、そうじゃん。四年生だよ。篠宮さんもあんまり就職活動してないけど一体どういうこと?

 ほとんどの四年生来てないよね。

 「そう言えばそうだよね。タカヤ先輩も篠宮さんもリクルートスーツ見たことない。どういうこと?」

 詩乃がじっと黙って考えている。

 「……やな予感。」

 え?

 「ま、いいや。そうかどうかは、そのうちバイトの他の人に聞いてみよう。本郷さんも知ってそうだし。大学で見かけるから、合ったら聞いてみるよ。」

 「え?何を聞くの?」

 「いや、想像でしかないから、分かったら教える。ヒデが知ってるとは思えないけど、一応聞いてみよう。」

 
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