愛しているから 好きにしろ
 
 「……お前、何したいんだ?本売る方?それとも書く方?」

 晴人、よくわかったね。すごい、見てたのか。

 「晴人。どうしてわかったの?」

 「二年もお前のこと見てたんだ。コツコツメモしたり、日記分厚いの書いてたり。本も読んでるだろいつも。そういうことが好きなんだろうと思ってたよ。」

 「本やライターとかそういう方面に行きたいけど、就職あんまりないみたいだし。難しいなら考えないと。」

 「お前、ウチの近くでそういう会社があったら就職するか?」

 「え?晴人の実家の近くって群馬?」

 「そう。」

 「えー、考えてもいなかったけど、そんなことあるの?」

 「言ってなかったけど、叔父さんが出版関係の会社をやってる。群馬に会社があるんだ。」

 「そうなんだ。すごいね。」
 
 「お前にその気があれば紹介する。悪い会社ではないからさ。一度見に来てもいいかも。」

 「ふーん。インターンシップがあれば行ってみてもいいかもね。」

 「そうか?聞いてみるよ。」

 「え、無理にいいよ。一応、できれば関東がいいし。」

 「……そうだよな。戻ったら相談したいことがあったんだ。俺の将来のことも含めて。」

 将来って何?就職のこと?

 「いつ戻れそうなの?」

 「早くても来週の終わりになりそう。なんだかんだで、学校以外の用事も出てきてさ。」

 「そう。わかった。頑張ってね。」

 「ああ、ありがとう。……奈由、好きだよ。よそ見するなよ。」
 ……晴人。

 「うん。おやすみなさい。」

 「ああ。おやすみ。」

 ごめん。晴人。私も好きって言えなかった。

 晴人が好きなんだけど、気になる人がいる。

 私の心に半分くらい住み着いてる。苦しいよ晴人。

 早く帰ってきて。そしたら治るのかな。

 
 
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