愛しているから 好きにしろ
「嬢ちゃん。失礼は許してくれ。名前を聞いてよいか?」
目の前の会長は柔和な微笑みを浮かべ、好好爺に変身した。
驚いた私は、逆らえなくなり小さな声で答えた。
「平野奈由です。」
「達也と同じ大学か?同級生か?」
「いいえ。私は三年生です。」
「そうかそうか。何を勉強しておる?」
「私は文学部です。」
「そうかそうか。」
そうかそうかを繰り返して、にこにこしている。何なの?
「子リス。もういいよ。ありがとう。」
タカヤ先輩はそう言うと、部屋のドアを開けてくれた。
「?……失礼します。」
そう言いながら、おじいさんに頭を下げて出てきた。
私が出ると、ドアを閉められた。
外に出ると、みんなが見てる。
え?何?
そして、篠宮さんが私の所に来て、腕をつかむと引っ張った。
「中にいるの会長?」
「え?ご存じなんですか?」
「知らないわけないでしょ。で、そうなの?」
「……そう言ってました。」
「何の話したの?」
「……えーと。特には。」
「……特にはなくて、あんなに大笑いする?大声出す?」
「き、聞こえてたんですか?」
「少なくとも、あんたの大声は聞こえたわよ。」
ま、まずい。青くなっていると、睨まれた。