愛しているから 好きにしろ
「まさか、結婚相手になったんじゃないでしょうね?」
「……そ、そんなわけないじゃないですか。聞いてたんですよね。なら私が否定したの聞こえましたよね?」
「会長相手に、あんたが否定したって無意味。あんたの意思なんてないも同然。」
は?なにそれ?
「むかつく。後から来て横取り猫みたいに。」
なんですって?
怒りでどうにかなりそうになったところで、詩乃に腕を引かれた。
「篠宮さん。人が足りないのでフロア戻ってください。ほら、奈由も。」
詩乃は助けてくれたんだね。お客様、ほとんどいないじゃん。
目配せされて、更衣室へ。
詩乃がビニール椅子を引いて腰掛ける。その隣に腰を下ろす。
「奈由。チーフって、ミツハシフードサービスの会長の孫で、時期社長候補らしいよ。」
「え?」
「でね。この間チーフが就職活動してないって話覚えてる?」
詩乃を見て無言で頷く。
「本郷先輩にキャンパスで会えたからちょっと聞いてみたんだ。そしたら、そう言ってた。チーフは就職決まってるから活動はしていないらしいって。ちなみに、篠宮さんもお嬢様。飲食チェーン店の社長令嬢なんだって。取引があるらしいよ。だからもともとチーフと知り合いなんだってさ。」