愛しているから 好きにしろ
 
 先輩が私を膝の間に座らせると、左腕で私のお腹の辺りを抱きしめて、右手で髪をゆっくり撫でてくれる。

 私は、先輩に寄りかかってミルクを飲み続けると、ため息をついて一回カップを先輩に渡した。

 先輩は私をソファの背に預けて、自分は前に回ってきた。

 私の顔をじっと見て、私が話すのを待っている。


 「……先輩。私、お別れしてきました。」

 「そうか。」


 「先輩、私、先輩のことずっと気になってました。心のここにはかりがあって、ゆらゆらしてました。そのはかりがね、さっき壊れたの。ちがう、壊れてないけど、もう晴人に傾くことはない。そしたらね、自動的に先輩のほうに傾いちゃった。どうしよう。」

 先輩は、私のほっぺを両手でつかんで、涙を拭ってくれた。

 「そうか。俺の方に倒れてしまったんだな。奈由はそれでいいのか?倒れると困るのか?一時的に倒れていたいのか?どうだ?」

 先輩は大人だな。
 私の選択を最後まで待っている。
 焦ったりしない。
 一時的に頼りたいのか?って聞いてる。
 すごいな。

 「ずうっと倒れていてもいいですか?」

 「ああ、ずーっと倒れておけ。はかりはいらない。もう必要ないだろう。ゆらゆらすることは俺の方に倒れてきた以上、お前に起きることはない。約束できるぞ。」
 
 
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