愛しているから 好きにしろ
そう言うと、優しく私を抱き寄せた。
そして、頭の上に自分の顎をのせて、はーっとため息をついている。
「奈由。やっと堕ちてきた。自動的に堕ちてくるとは予想外だったけどな。一悶着あるかと構えていたんだけど、杞憂だったな。まさか、あいつが他の女を作るとはな。」
え?どうしてわかるの。何も言ってないのに。
驚いて先輩をパチパチと瞬きしながら見ていたら、苦笑いしている。
「お前が、自分からあいつを振ることが出来るとは思っていなかったからな。でもお前の反応を見るに、あいつに倒れることはないと断言して泣いている。つまり、あいつが自ら招いた何かでお前に愛想を尽かされたんだろ。女しかないだろう。」
「違うの。私が群馬へ行けないし、教員採用試験をどこで受けるか迷っている晴人を支えることが出来ていなかった。私も悪いの。不安にさせてた。先輩のことも。」
「ばかだな。お前は悪くない。言っただろ、自分の人生はお前が決めるもんだ。あいつが勝手に想像して戦線離脱したんだよ。俺はなにがあっても、お前の進路を妨げることはしないが、自分の人生とどうしたらリンクできるか常に考えてる。逃げることは絶対ない。」
「どうしよう。先輩のこと、好きになって来ちゃった。どうしよう。」
「どうしようって、馬鹿だな。どうしなくてもいいから、そのまま好きになれ。お前のこと、まるごと受け止めるから。奈由愛してる。俺のものになれ。」
そう言うと、また抱きしめてくれた。
顔を上げるとニコッと笑い、キスをくれた。
ぐったりしている私に、何度も優しい合わせるだけのキス。
先輩にもたれて眠ってしまった私を、ベッドに連れて行って布団を掛けてくれた。
そして、おやすみといってキスをくれると、鍵を持って出ていった。