愛しているから 好きにしろ
 
 「俺は、ない。お前は、自分ではないと思うだろうが、流されやすい。」

 「……よく言うよ。先輩だって、この間バイトの二年生に頼まれて彼氏のフリしてあげてたじゃん。私いるのに頼むとかあの子も変。」

 「あの子の相手がヤバい奴だったから、しょうがなくやったんだ。俺のバックをチラつかせて。やりたくなかったが、これも人助けだ。」

 「……。もういい。だから、お屋敷でも大丈夫だよ。たまに会うのは新鮮だって詩乃も言ってるし。喧嘩しないらしい。」

 「……。じじいと話し合ってみる。お前が屋敷に来ればいいんだ。」

 「いやです。学校遠くなる。」

 「送り迎え付きだ。」

 「もっといや。」
 
 そうやって、平行線を辿る話し合いも、マンションの契約がお爺様の指図で卒業までになっていたことに先輩は気づかず、結局考える間もなく、退去させられた。

 会社に入った先輩は、とても忙しくなり、私に構う時間はなくなってしまった。

 時間なんていくらでも作れるというのは、虚言だった。やっぱりね。

 
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