愛しているから 好きにしろ
今日はマンションで三橋先輩に会うこともなく、そのまま放課後になった。
詩乃は今日バイトなく、彼とデートと言ってすぐに分かれた。
バイトの面接時間までカフェで時間潰そうかな言うと、横を歩く晴人が一緒に行くというので歩き出した。
歩道を歩いていると、晴人が腕を引っ張って自分の方へ抱き寄せた。
後ろから自転車が凄い勢いで走ってきていた。晴人はさりげなく自分を車道側にして庇ってくれた。
「なんだよ?」
「ありがと。優しいね、晴人」
「奈由は、ボーッとしすぎ。ほんと、心配になるわ」
文学部のこの学科には男子が少なくて、入学時からウマが合うのか一緒にいることが多かった。
詩乃に彼氏がいるので、ふたりでいることも多い。
晴人とそういう関係かと聞かれることも増えて来た。
「なあ、奈由。明後日の土曜日一緒にどこか行かない?」
コーヒーを飲みながら、突然誘われた。どういう意味かわからなくて、パンケーキを頬張ったまま、固まる。
晴人の長い指が私の頬に触れ、つまんだものがそのまま晴人の口に入る。
「パンケーキのかけらが付いてるぞ、まったく。幼稚園児か」
パチパチとまばたきをしながら晴人に聞いてみる。