愛しているから 好きにしろ
 
 今日は週末。

 久しぶりに彼の家に行こうかと言ったら、今日は私の家に来るという。

 忙しいから最近そんなことなかったんだけど、久しぶりだから今日は私が夕飯作っておくことにした。

 そうなんだよね、料理が。彼がうますぎて、マジでいや。

 お屋敷には料理人もいるのに、なぜか恐ろしく料理がうまい。

 バイトの時から思っていたけど、これも彼曰く突き詰める性格のせい?


 ということで、今日は少しでも早く帰りたかったのに、嫌な人に声をかけられた。

 「平野、まさか帰るとか言わないよな。」

 せっかく早めに切り上げて事務所出てきたのに、ビルを曲がったところで取材から戻った先輩の飯田さんに見つかった。

 ガシッと腕を捕まれる。

 「朝、言っただろ?記事終わったんだろうな?」

 「……今日は用事があるんです。明日の朝一でお渡ししますけど、必要なら飯田さんのファイルに転送しますので。」

 「そういう問題じゃない。俺に見せて調整していかないとダメだろ。」


 一歩近づいて、目の前まで来る。

 腕を捕まれてるので、まるで抱きしめられてるみたいな距離。



 すると、後ろから声がした。

 「飯田さん。久しぶりですね。」


 
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