愛しているから 好きにしろ
飯田さんは後ずさりながら背を向けて去って行った。
榊さんは、私を見るとにっこりと笑いかけた。
「さーて。平野さん、やっと会えた。あいつ、俺にも会わせないようにしてたからさ。」
そう言うと、なめるように私を見つめた。
「まあ、あいつの気持ちはわからんでもない。君、可愛いだけじゃないな……何か惹き付けられる。」
どういう意味?
「今回、君に会わせろと言ったのは、記事のことで気になっていて、あいつに彼女を助けないといけないかもしれないと言ってやったんだ。そしたら会ってもいいとお許しが出てね、会いに行く途中だったんだけど、危ないところだったな。いつもあんな風に腕捕まれたりしてるの?」
よく分からないけど、あいつって。もしかして。
でも、私のことを前から知ってるの?
「今日初めてです。びっくりしました。ただ、結構強引なのは前からです。」
「そうか。これは、報告したら大変なことになりそうだ。」
「……あの。私のことご存じだったんですか?」
榊さんは、顎に手を当ててにやりと笑う。
「そうだね。三年前から聞いていた。君が入社したときからね。」
入社したときから?何それ?
「君を命より大切にしているあいつが、君のことを心配して昔から知り合いの俺に連絡してきていたんだ。」