愛しているから 好きにしろ
私を命より大切にする人……。
「達也だよ。これは、今日のこと報告するとまずいかもな。あの会社に勤めさせるのは無理と判断するだろう。俺もここまで編集長も腐ってるとは思わなかったから、責任を感じるな。」
……えーと。
「あの、先輩と親しくされているんですか?」
「そうだな。もう十年くらいになる。あいつが高校生の時にバイトでミツハシフードサービスに入っていた頃からの付き合い。若い頃のあいつを知ってるよ。」
へー、高校生の先輩。知りたいな。
「あ、目輝かせてるし。今度教えてあげるよ。」
ふたりで笑っていると、後ろから低い声がする。
「榊。お前どういうことだ?連絡しても返事がないからここに来てみれば、何故奈由と一緒にいる?」
振り向くと、怖い顔をした先輩がこちらを睨んでる。
怖い。久しぶりに見た、怒った顔。こんなに怖かったっけ?
「……達也。落ち着け。俺は感謝されるならわかるが、怒られる筋合いはないぞ。彼女の危ないところを助けた所なんだからな。」
「……なんだと?」
走って私の所に来ると、急に腕を引いて肩をつかみ、私の頭から足まで凝視している。
「奈由?何があった?何かされたのか?誰に?」
息をもつかせない勢いで一気に言いつのる。
「痛いよ、先輩。大丈夫だから。」
肩に指が食い込んでる。
「……あ、ごめん。」
そう言うと、力を抜く。