愛しているから 好きにしろ
 
 「……実は、今日締め切りの記事については、そういうことがありそうなら出すのやめようと思って、飯田さんにはまだ見せてないんです。」

 「……。」

 「それだけじゃない。達也、落ち着いて聞け。飯田は、彼女に気がある。手込めにしようとしてた。」

 バンっとすごい音がして、先輩が机を叩いて立ち上がった。

 まずいよ……。そうじゃないのに。変なオーラが先輩の身体から出てる。
 
 「……で。榊がそこを助けたとか言うのか?」

 恐ろしく低い声ですごい形相で話す
 
 「そう。だから、お前は俺に感謝しろ。勘違いも甚だしいぞ。」

 「……そいつ、コロす。」
 
 「……違うから、手込めになんてされてない!」

 「じゃあ、何されてたの?」
 
 榊さんが二杯目のビールを喉を鳴らして飲みながらこちらを見る。

 「……だから、帰ろうとしたら引き留められて腕を引かれて……」
 
 「そうだよね、見るからに抱きしめられそうになってたよね?」

 「……。えーと、確かにそうかもしれないけど、まだ抱きしめられてませんでした。榊さんのお陰です。」

 「……奈由。」

 ひー、怖い。怖いよー。赤い目でこっちを見てる。

 「大丈夫だよ、先輩。だから……」

 「いつも、気をつけろと言ってるよな。俺の言ってること守ってないのか?ブザーも常に持ってろって言ってるよな。」

 ……先輩。会社の上司相手に防犯ブザー持つ人います?って、言っても今の先輩には聞こえなさそう。謝るの一択だな。

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