愛しているから 好きにしろ
「ほ、ホントですか?嬉しいです!」
「……榊、てめえ……。」
「おーい。達也。以前、俺のところに入れてやってくれって言ってなかったっけ?俺は頼まれても実力のないヤツは入れないとあのときは蹴った話をこちらからしてるんだぜ。ありがとうじゃないのかよ?」
「……あのときとは、状況が違う。俺は、こいつを野放しにするのはやめるとさっき言っただろ。」
「野放しとは失礼な。ウチに入ったら野放しはないぞ。首輪つけて、キチンと仕事させるから安心しろ。」
「仕事のことじゃねえ。プライベートのこと言ってんだよ。」
「なら、それは二人で話し合えって言っただろ。悪いがな、彼女は今からかなりの価値が出そうだ。青田買いなんだよ、いくらお前でも仕事のはなしはお前の言うなりにはならねえよ。で。平野さん。OKってことでいいね?」
先輩はぶすっと下を向いてウイスキーを回している。ごめんなさい。先輩。
「……榊さんの記事は前から拝見していて、いいなと思ってました。今日のことも考えるとあの会社にはいられません。お話よろしければキチンと聞かせてください。」
「よし。じゃ、来週から相談しよう。で、あっちの会社の退社についても任せとけ。もう、行かなくていいから。片付いたら、荷物だけ引き取りに一緒に行こう。さ、携帯出して。アプリ交換しよう。」
そう言うと、あっという間に交換してしまう。
携帯の裏に住所も書いてくれる。
「ま、達也も知ってることだけど、君にも伝えておく。俺は既婚者。そして会社のビルの近くに住んでる。来週連絡するから、そこに来てね。じゃ、お二人さん後は二人でどーぞ。」
そう言うと、万札を一枚ひらひらさせて、テーブルに置いて帰っていく。
先輩は何も言わず、ウイスキーとお話してる。
怖いよー。おいてかないで。