愛しているから 好きにしろ
転職
何故か月曜日。
日曜日の夜に榊さんから連絡が来た時間にマンションの下に降りてみると、彼の運転手と榊さんが一緒に待っていた。
「よう、達也。平野さん、おはよう。」
そう、先輩もここから出社。
私の手を握り、一緒に降りてきたのだ。
「おはようございます。」
ぺこりと新入社員は榊社長様にご挨拶をするのである。
私は今日スーツ姿。他の社員の方にご挨拶するかもしれないし。
「平野さん。髪もまとめて、リクルーターのようだ。でもそれにしてはちょっと色っぽいけど。」
「……榊。朝から殴られたいのか。」
「まあまあ。初日からそんなんで、達也いい加減にしろよ。ハッキリ言うが過保護だぞ。新人でもあるまいし。」
「うるさい。奈由のことは、誰に何を言われようと関係ない。俺のやり方で行く。」
……過保護。そうだよね。そうじゃん。
「先輩、では頑張って仕事してきてくださいね。私も頑張ります。」
プッと吹き出して笑い出す榊さん。
「ヒーヒヒ……、こりゃしばらく退屈しないな。面白すぎる。」
お腹を抱えて笑ってる。何がそんなに面白いの?
先輩を見ると、ぶすっとして榊さんを睨んでる。
しかも、後ろに立ってる顔見知りの運転手さんまで口元を覆って、顔を赤くして笑ってる。
「榊。SNA出版には今から行くのか?」
私の顔をチラッと見て榊さんが言う。
「そうだな。彼女が書いていた記事もあるだろうし、先にかたをつけたほうがやりやすいかもな。いい?平野さん。」
はいと頷く。
出来れば記事を渡したい。本当なら金曜日に二本記事を渡すはずだった。
結構時間かけて書いた記事があるのだ。