愛しているから 好きにしろ
すると先輩が口を開いた。
「そうか。なら、俺も行こう。」
「え?どうして先輩も?」
「榊、編集長の予定押さえてあるんだろ、お前のことだ。」
「そりゃそうだ。俺だって忙しい。行ったときに会えないんじゃ二度手間になるしな。」
「よし、なら一緒に行こう。」
「ねえ、どうして?」
「榊だけだと、すんなりいかない可能性もある。俺は弁護士の代わりってとこだな。」
榊さんが、ふふんと鼻を鳴らして先輩を見た。
「そんな心配は無用だけどな。ま、一応ありがたくご同行頂くとしようか。これで何かする気もおきなくなるだろう。」
なんだか、ふたりとも嫌な微笑みを浮かべている。怖いんですけど。
事務所に入ると、みんなびっくりしてこちらを見てる。
いたたまれない。
編集長が会議室に私達を押し込むなり、仕事しろと雷を落とした。
編集長は私達三人の顔を眺めたあと、私に向き直ると口を開いた。
「平野さん。榊さんから金曜日の夜に君を引き抜きたいと連絡があった。詳しくは飯田に聞いてくれと言われたんでね。彼に事の次第を問い詰めたところ、記事のことのようだった。すまなかったね。今後はそういうことのないようにするんで、残ってもらえないかな。君を育ててきたのはこの私だ。ようやくつぼみが開いて花が咲こうというときに、他に取られるのは正直心外だよ。」