囚われのシンデレラーafter storyー
結局、夕食も食べずに帰って来ていた。
狭いアパルトマンのソファの上で正座して。そして苦しく痛い胸を押える。
あの背中が目に浮かんで苦しい。
何もかも忘れられたら、どんなに楽だろう――。
結局、何の結論も出せないまま、出勤する日がやって来た。この足は、大きな岩でもくくりつけられているんじゃないかと思うくらいに重い。
朝のオフィスに入り、同僚たちと挨拶を交わす。おそるおそるマネージャー室に目をやると、西園寺さんは既にデスクで仕事をしていた。
ダメだ。
針のむしろ状態で。でも、周囲の環境は何一つ変わっていない。何事もなかったように自分の席に座っていられるのは、すべて西園寺さんの温情なのだと改めて実感する。
その日は、ほとんど自分のデスクから動けなかった。
そして、終業時刻から少し経った時だった。
”――ヨシタカがこの参考資料を持ち帰るのを忘れてますよ”
アベルがマネージャー室から声を上げた。
”そう言えば、今日は珍しく飛んで帰ったみたいだけど。急いでいて忘れたのかな。ヨシタカでもミスすることがあるんだな”
ランベールが笑っている。
確かに、もうそこに西園寺さんの姿はなかった。
”確か、この資料って、土日のうちに家で読んでおきたいって、ヨシタカが言っていませんでしたか?”
”ああ、そう言っていた。届けてあげた方がいいと思うけど、誰か、近くに住んでない? あ……そう言えばアリサ”
そこで私を見るランベールにぎくりとする。
”同じように日本から来てるんだから、会社から斡旋されてるアパルトマン近いんじゃない?”
”え……? ま、まあ、たまたまこの前見かけましたけど――”
と、つい言ってしまったけれど、この状況で私が西園寺さんの家になんか行けるはずもない。
”だったら、帰りに届けてあげるといいんじゃないかな。僕から、ヨシタカに連絡しておくから”
"え……で、でも――っ"
それを止めようとした時にはもう、アベルが電話してしまっていた。
"――ああ、繋がって良かったです。デスクに参考資料が置いたままになっているので、自宅に届けようと思うんですが――え? いえ、いえ、大丈夫です。近くの人間についでに寄ってもらうので……はい、はい。もし、なんなら管理人室にでも預けますから"
幸か不幸か、届けるのが私だとはアベルは言わなかった。
"――というわけで、アリサ、よろしくお願いします。今、ヨシタカ、出先らしいんだ。だから、管理人室に預けておいてくれだって。機密性のあるものでもないし問題ない"
結局私は頷いていた。