囚われのシンデレラーafter storyー
シャワーを浴びて戻って来たあずさが、タオルを手に壁の前に佇む。
「……佳孝さん。やっぱり、少し多くないですか? ほとんどが、私一人が写っている写真だし……」
「選べなかったんだ。どれも気に入ってるから、毎日見ていたくて」
一つずつ買い集めて来たフォトフレームは、今では10個にもなってしまった。そのうちの9つは、壁に並んで飾られている。残りの1つとあずさと一緒に選んだフレームは、壁ではなくソファー脇のチェストに置いていた。
そのほとんどがあずさだけの写真。二人で写っている写真は、あずさが選んだ1枚だけだ。
「うーん……恥ずかしいな」
あずさが、そう言って苦笑する。
「でも、結構いいと思わないか? 俺はいい出来だと思ってる」
これでもホテルでいろんな仕事をしてきているから、インテリアの知識もそれなりにある。このレイアウトはかなり気に入っている。あずさの魅力を最大限に発揮したレイアウトだ。
「あれ……? この写真、この前撮ったものじゃないですね。これ、どうやって作ったの?」
壁にかけてある一つのフレームをあずさが指差した。
「ああ……これはインターネットから。モノクロの方があずさのカッコ良さを表せる気がして敢えてこうした。いいだろ?」
それは、あずさがチャイコフスキーコンクールの本選で演奏している時の写真。
インターネットの記事をスクラップしていたものを使ったのだ。
バイオリンを構えた真剣な眼差しの横顔が、凛として美しい。
「あーっ。やっぱり恥ずかしい。この部屋にいる時の視線の置き所を考えちゃいますよ」
そう言ってあずさはそこから逃げ出してしまった。でも、すぐにこの腕に捕える。
「ごめん。でも、これは許してほしい。あずさがいない部屋に帰って来る、せめてもの慰めだから」
まだ少し濡れた髪のあずさを抱きしめる。
「頼む」
腕に力を込めてもう一度囁く。