囚われのシンデレラーafter storyー
「ファイナルの日、話していた人って誰?」
「そうそう。ずっと、聞こうと思っていたの」
女子が集まれば、お酒も入れば、こういう話題になるのは自然なことで――。
「あ……えっと――」
「日本人だよね? 素敵な人だった」
「あ――」
「恋人? 家族じゃないよね」
少し口籠れば、弾丸のように次々言葉が投げかけられる。
「アズサに出会ってから、そういう人がいる素振りなんて全然なかったから。いつも練習ばかりしていたし」
「ねえ、どうなの?」
4人くらいに囲まれて一斉に見つめられた。
「恋人……かな」
アハハと顔を引きつらせながら笑う。
正確には、”あの日に再び恋人になれた”と言うべきだけれど。
その辺のことは、あまりに紆余曲折あり過ぎて、簡単に伝えられるようなことではない。だから、省略することにする。
「――そうなると、マルクが気の毒だけど。まあ、仕方ないよね」
「そもそも、アズサは最初からマルクのことは眼中に入っていないでしょ。アズサから見れば、マルクはお子ちゃまなんじゃない?」
マルク――。
そう言えば、今日もどこか元気がなさそうだ。
「マルクも、どうしてこう無駄なことをするんだろうね。他に目を向ければ、いくらでも相手なんて見つけられるのに」
ちらりと部屋の中を見回してみる。
視線に止まったマルクは、他の男の子たちと喋っているけれどいつもの明るい笑顔はない。