囚われのシンデレラーafter storyー
ソファで向き合うように俺の膝に載るあずさが、身体を激しく揺らす。
いつもの、きっちりと一つにまとめられていた長い髪は、あちこちがほつれて緩んで、おくれ毛が白い肌に落ちる。
「俺だけだって、言って。好きだと、言ってくれ」
「好き――好きです……好き」
繋がりながらうわ言のように繰り返す。あずさの淫らな姿に、あずさの中の泣きたくなるほどの温かさに、切なさが込み上げてたまらなくなる。
『彼女自らが俺をいらないと言う日が来るまで、離れるつもりはありません』
それはつまり、あずさがいらないと言ったら離れるということ。
そう松澤には言ったが、本当にそんなことが出来るのか、今では全然自信がない。
――私は、これまで自分が得て来た経験、力、人脈、すべてをかけて、進藤さんを育てたいと思っている。
俺よりあの男といた方が、あずさのキャリアには間違いなくプラスになることは分かり切っている。
もし、あずさがあの男の好意を知って、惹かれてしまったとして――。
その時俺は、本当にあずさを手放せるのか?
あずさを思って送り出せるのか。
「よ、したか、さん……っ」
あずさが、俺の上で艶かしく身体を震わせている。
あの男があずさを抱く姿を想像して、あの男にこの姿を見せるのかと思うと――。
かっと燃えるような激情が俺を突き刺した。
無理だ。
想像しただけで、気が狂いそうになる。
「あずさ、どこにも行くな」
その裸体を衝動のままに抱き寄せてきつく腕で縛りつける。儚げな背中を力任せに抱きしめた。
「ずっと、俺のそばにいてくれ」
柔らかな膨らみに縋り付くみたいに、強く抱きしめて。
俺の背負っているものが、軽くなくても、
あずさにまでそれを背負わせてしまうのだとしても――。
「あずさは、俺のものだ」
激しく突いて、突いて、突きまくって。
あずさが我を忘れて喘ぐ。
この快感ででもいい。あずさを俺に縛り付けたい。
「どこにも、行かせない。俺だけの――」
「どこにも行かないよ」
あずさ――。
「何があってもずっと、そばにいるよ」
あずさが俺を抱きしめる。
二度もあずさを手放したのに、もう、あずさが俺をいらないと言っても逃してやれない。
そんな自分が怖いのだ。身勝手な自分が、苦しさと葛藤して、引き裂かれそうになる。
「愛してるから。絶対に、離れない。ずっとずっと、私のそばに、いて……っ」
――でも。
あずさの温もりとあずさの声が、こんなにも自分勝手でみっともなくもがく俺を包み込む。
「あずさ、好きだ……好きだ」
こんな俺を、許して欲しい。
その夜、縋るように無心で抱く俺を、あずさは何も聞かずにただ受け止めて。
その体温で俺を包み込んだ。