囚われのシンデレラーafter storyー
「……今日は、ごめんな」
ベッドの中で、あずさが俺を抱きしめ、何度も髪を撫でてくれる。
「ううん。私の方こそ、久しぶりだからって、ちょっと乱れ過ぎじゃなかったですか? 恥ずかしいな」
あずさの胸に顔を埋め、背中に回した腕に力を込める。
「気持ち良かったか?」
「……うん。凄く」
頭上で、躊躇いがちに恥ずかしそうに、でもあずさがそう呟いた。
「それなら良かった。俺も、あずさに包まれてるみたいで、最高に気持ち良かった。今も。あずさの胸、気持ちいい」
温かくて柔らかくて。いつまでもこうしていたくなる。
ずっと二人でこうしていられたら、どれだけいいだろう。
あずさの膨らみに唇で触れ、そのまま押し付ける。
「あ……っ、ちょっと」
「ん? 何?」
「なんだか、少し――」
くすぐったがっていたのに、俺に触れる指が優しくなる。
「嬉しい」
「何が?」
「佳孝さんが、私に、甘えてくれているみたいで」
「それが、嬉しい? こんなの、幻滅しないか」
縋って甘える姿など、できれば見せたくないけれど。今は、この温もりに寄りかかりたいと思ってしまう。
「そんなわけないじゃないですか! むしろ、ドキドキさせられてます。他の人が知っている佳孝さんは何でも完璧にできて冷静で、誰もこんな姿想像できないはず。私だけが佳孝さんの甘える姿を見られるなんて、こんなドキドキありますか?」
あずさが「私しか知らないって、最高でしょう?」と冗談ぽく言う。
「佳孝さん……」
「ん?」
あずさの声が、深く沁み入る。
「私は、いつも包まれてばかりだから。私も時には包み込みたいって思うんですよ。何か辛いことがあった時は分かち合いたい。だから、何でも言ってね」
「あずさ……」
俺より小さい身体のはずのあずさが俺を覆ってしまうみたいに抱きしめた。
「――そうだな」
落ち着いたら、あずさに話をしよう。
俺の家族のこと、この先の二人の形についての俺の思い。何もかも。
なめらか素肌がぴたりとくっつく。
そして、ゆっくりと互いの身体を離し、どちらからともなくキスをした。