囚われのシンデレラーafter storyー
「今日は、ありがとう。忙しいのに悪かった」
その後、あずさをタクシーでホテルに送り届けた。
「ううん、まだそんなに遅い時間じゃないし、大丈夫」
ぎりぎり日付が変わらない時間。
とは言え、あずさはまた翌日もオケとの合わせがある。笑顔を向けてくれても、やはり俺は心配になる。
「あまり、無理はするな。やっぱり、少し痩せたみたいだ」
あれだけ激しく抱いた張本人のくせに、どの口が言うのかとも思うが――。
「しっかり食べてますから大丈夫です。じゃあ、明日」
「ああ」
ホテルの中へと消えて行くあずさを見送った。
翌日、仕事を終えオフィスを出た。この日もあずさはオケとの合わせがあると聞いている。
松澤と顔を合せたことが頭を過り少し気が重いが、いつものようにオケの練習場所がある建物へと急いだ。
その途中、建物が見えて来たところででスマホを鞄から取り出し確認する。一件のメッセージが表示されているのに気付き、立ち止まった。
あずさからだった。
【今日は、少し早く終わったので先にホテルに戻っていることにしました。お仕事終わったら連絡ください。タクシーで佳孝さんの部屋まで行きます】
早く終わったのか。
どうせあずさもタクシーに乗るのなら、俺があずさを迎えに行って一緒にそのタクシーでアパルトマンに向かえばいい。
そう思って、タクシーを捕まえようとしたところだった。
「――西園寺さん、また、今日も進藤さんを迎えに来たんですか?」
その声に身構える。
前日も会った、出来れば会いたくないと思っていた男が俺を呼び止めた。
通りの向こうからこちらへと足早に近付いて来るその表情は、酷く強張っていた。