囚われのシンデレラーafter storyー
何か――。
「松澤さんがかなり心配していたと言っていました。信頼関係が大事だから、不安を与えないようにしないとなって。本当にそうですよね。プロとして、これからはもっともっと、体調管理もしっかりしなければと思っています」
「……それだけか?」
「ええ、そうですけど。他に何かあるんですか?」
「いや。それならいいんだ」
ふっと息を吐くと、松澤さんが前のめりだった身体を後ろの背もたれに預けた。
一体、なんだろう――。
「松澤さんは、彼のことをテレビか何かでお知りになったんですか?」
「ああ……何となく見覚えがあったところに、君と二人でいるのを見て」
「そうですか……」
佳孝さんが言っていたことと同じだ。
「西園寺さんも2年前は大変だったな。一般人のはずなのに、まるで芸能人のように扱われていた。まあ、あれだけの美男子なら致し方ないか。確かに、テレビで見るよりはるかにいい男だった」
腕を組んで窓の向こうに向けられていた視線が、私へと戻る。
「それで、今は静かに暮らせているのか?」
「はい。パリで暮らしているからというのもあるかもしれませんが、普通に仕事をして普通に生活して。穏やかな生活をしてくれていることが、私も嬉しいです」
今の、佳孝さんが穏やかに普通に暮らせる日常が続いてほしいと心から思う。本当に、それが一番の願いだ。
「この先も、その生活が続くといいな……」
私が今思っていたことを口にした松澤さんを思わず見つめた。
「これまで、苦労することが多かったから、この先は平穏に過ごしてほしい。辛かった分、これからは笑っていてほしいんです」
だから。今度の公演は、絶対に最高のものにしたいのだ。