囚われのシンデレラーafter storyー


「君に言ったことと同じことを言ったよ」
「同じって……」

昂ぶる私とは正反対に、松澤さんは、表情を変えることもなく落ち着いた口調でそう口にした。
それは、まるですべてを悟ったかのような静かさだった。

「西園寺さんの置かれた立場では、君の今後に悪影響だと、恋人として相応しくないと言った。バイオリニストの恋人なら、もっと君の体調を気遣うべきだと言った」
「相応しくないって……」

――君に言ったことと同じこと。

それって、西園寺さんの過去が、私の活躍の邪魔になる。そういうこと――。

「一度離れたのに、君が有名になったからと言って再び近付くのはみっともないとも言った」

そんな――。

怒りと苦しさがごちゃごちゃになって、私から冷静さなんてものを奪う。

わなわなと身体が震えて。怒りと同じくらいの恐怖が私を貫く。

「どうしてそんなことを? あなたが一体何を知っているんですか? あの人が、どれだけ苦しんで葛藤して、今、私の隣にいてくれているのか。いつもいつも、自分のことなんて全然考えてくれなくて、私のことばっかり考えて。私がやっと捕まえたんです。やっと二人で笑っていられるようになったのに……そんなこと言われて、あの人がまた私のそばからいなくなったら――」

身体が震えて仕方ない。

震えを抑えることが出来ない。
恐ろしいほどの恐怖に唇も震える。

私は知っているから。
佳孝さんが、どんな風に考えるか。

それに――。

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