囚われのシンデレラーafter storyー
1.佳孝さんの卒業アルバムが見たい
*あずさ*
電話は、私たちにとって重要なアイテムだ。
声だけだったり、顔を見ながらだったり。会いたい時にすぐに会えるわけではないから、この声を届けるということはとても大切なこと。
パリとモスクワの時差があまりないのが、本当にありがたい。
「――佳孝さん、今度、日本で会う時に、お願いしたいことがあるんですが」
いつもと同じように、夜、寝る前に会話をする。そこで、私はそう切り出した。
(お願い? あずさがお願いなんて珍しいな。何でも言ってみろ)
それが何かも聞かずにそんなことを言われると、余計に言い出しづらくなる。
でも、ここ数日ずっと考えていた。
ー佳孝さんが学生の頃の写真を見たいー
きっかけは簡単。
友人が恋人の学生時代の写真を見てはしゃいでいたからだ。
”最高に、イケてる! 私の彼は本当に可愛くてカッコいいの!”
なんて言って自慢して来て。
いや。絶対、佳孝さんの方がかっこいいと思う――。
そう心の中で反論してみたりして。
学生服の時代はとうに過ぎた今だから、無性にその時代に思いを馳せてしまって。私の知らない佳孝さんを見たいと思った。
どんな中学生だった?
どんな高校生だった?
一度そう思い始めたらもう我慢できなくなって、思い切って言葉にした。
「佳孝さんの卒業アルバムが見たいの」
(……え? なんだって?)
聞き返されてしまった。