囚われのシンデレラーafter storyー


「え……っと」

小学校のアルバムということは小6の佳孝さん。12歳だ。

1組――。
仕方なく順番に見て行く。

なんだか、中身も、私のものとはどこか違う。
本当に皆が皆、きちんとした姿で写っている。間違ってもピースなんかしていない。
女の子は丸襟に赤いリボン、男の子は白いシャツにVネックの紺色のセーターを着ていた。

西園寺だから、最初の方にいるはずだよね――。

「あ……っ!」

早々に見つけてしまった。
どうしよう、どうしよう。
もう、悶えまくって足をばたつかせた。

「見つけたのか?」
「はい。可愛い。可愛いです!」

ちゃんと面影はある。
あるんだけど、まだあどけなくて。

凛々しい男の子なんだけど、でも、可愛い――!

「どうしよう。本当に、可愛いです」
「そんなに、可愛い可愛いと言うな」
「だって、可愛いんだもん」

やっぱり、その辺を駆けずり回っている感じはない。
きちんと切りそろえられた髪に、真っ直ぐに伸びた眉。
一点をしっかり見つめている理知的な目。
でも、そのすべてのパーツが、幼くて小さい。
当然なんだけど。

ミニチュア佳孝さんで、可愛い!

私があまりに騒ぐから、その手のひらが私の頭にポンと載せられた。

「笑い過ぎだ」

私を覗き込むその顔は、少し怒っている。

「笑ってないです。可愛くてかっこいいの。このクラスに、絶対佳孝さんのこと好きな女の子いましたよね?」

私を見るその目を見つめ返した。
そうしたら、何故かその目はどこかへと移ろう。

「どうだろうな。覚えていない」
「バレンタインデーとか、どうだったんですか? 下駄箱がチョコレートで溢れているとかそういうことはなかったんですか?」
「覚えていない」

覚えていないと言い張る佳孝さんを追い詰めたくなる。

だって。クラスにこんな男の子がいたら、絶対に女子は騒ぐに決まっている。


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