囚われのシンデレラーafter storyー
「そんなわけないです! 絶対、何人かいるはず。もしかして、半分以上とか――」
騒ぎながらそのクラスメイト達を見ていたら、すぐに一人知っている名前を見つけてしまった。
「――」
「どうした?」
急に静かになった私に、佳孝さんが不思議そうに私を見て視線をたどる。
「……う、ううん。佳孝さんの隣にいるの、斎藤さんですよね? 同じクラスだったんですね」
「ああ……そうだったな」
斎藤さん……。
ずっと、そばにいたんだと言っていた。
「そ、それにしても、この二人が並ぶと凄い威力ですね。女子も大盛り上がりじゃないですか?」
この時の斎藤さんにとっての佳孝さんは、まだ友人だったのだろうか――。
「じゃあ、次は中学生の佳孝さんをお願いします!」
気を取り直すように明るい声を出すと、佳孝さんが冗談ぽく「承知致しました」と笑顔で答えた。
中等科――。
男の子って、3年間でこんなにも変わるものかな……。
30歳の私が15歳の佳孝さんに見惚れているありさまだ。
「……佳孝さん」
「ん?」
私の肩から、佳孝さんも同じページを覗き込んでいる。
「本当のことを教えてください」
「どうしたんだ?」
さっきと違って、もう姿勢を正さずにはいられない。
「何人の女子から告白されましたか? ファンクラブはありましたか? 正直に答えてください」
静かにそう問い掛けた。
「今度は何だよ。そんなこと、覚えてなど――」
「覚えられないくらい、告白されたということですか……?」
「いや、そういうことではなくてだな――」
中学生になると、可愛らしさなんてどこかに消えていて。
ただただ、精悍な顔立ちをした男の子がそこにいた。
「俺は、そんなに社交的でもなかったし、あずさが思うほどモテてはいない。女子を笑わせるような話術もないし、クラスのムードメーカーでもない。この頃って、そういう男がモテるだろ?」
「分かってないです」
「……え?」
「佳孝さんは、なーーっんにも、分かってません!」
この人は、一体、何?
しらばっくれてるの?
それとも、本気でそんなことを思う、天然さんなの――?