囚われのシンデレラーafter storyー
―――。
「―――」
――――。
「……あずさ?」
――――――。
「おい、あずさ」
―――――もう、無理。
何も言えない。
感情を激しく揺さぶられる、この感情は一体何――?
「あずさ、どうした!」
無言のままただじっとしている私の肩を揺さぶる。
「……ダメですよ。これは」
18歳の佳孝さん。人をかき乱すカッコ良さだという表現が一番近い。
野に放してはいけないレベル。この濃紺の詰襟の学生服が、余計に……。
スーツ姿とも違う。
この3年間だけの特別なビジュアルなんだ。
何か、見てはいけないものを見てしまったような背徳感。
こんな人、隣にいたら――。
「ねぇ、佳孝さん。今度こそちゃんと答えてください。女子、殺到ですよね? いいです、分かりました。この容姿なら直接告白するのは難しいかもしれません。でも、手紙、メール。そういう告白、たくさんされましたよね?」
「繰り返しになるが、本当に、中高時代はほとんどそういうことはなかった。殺到だなんて、もってのほかだ」
「そうですか……」
またも現れた、一人の男の子。
まるですべての外敵からガードするかのように佳孝さんの隣にいる――斎藤さん。
この時はもう、絶対に佳孝さんに恋していたはずだ。
毎日隣にいて、一緒に授業を受けて、きっとお昼休みも放課後も一緒にいて。
ずっとずっと、佳孝さんの隣にいたはず――。
私の仮定は確信に変わる。
斎藤さんだ。
クラス中、学校中、いや目に入る女子すべてを、佳孝さんから遠ざけた。