囚われのシンデレラーafter storyー


「ほら、あずさだから、この写真もそんな風にいいように見えるんじゃないか? この頃の俺は、そんなに注目されたりもしていない。その辺にいる、普通の高校生だ」

だから、そんな呑気なことを言っている。
事実を知らない佳孝さんは、本気でそう思っている。

「――じゃあ、佳孝さんが告白されたのは、高校生の時に一度だけなんですね」
「え……?」

斎藤さんが言っていた、佳孝さんが高校時代にお付き合いしていたという子の話。おそらく、その子だけ――。

「私が、この時に佳孝さんに出会っていたら。
外見だけで人を好きになることなんてないと思っているけど、この佳孝さんには、絶対に一目で恋に落ちた」

そういう子たちが、たくさんいたはずだ。

「だって、現に、今も心奪われて苦しい。胸が苦しいです」
「あずさ……」
「もう、この写真から目を離せない――」
「だったら、もう見るな!」
「あ……っ!」

突然アルバムを奪われた。

「返してください。どうして閉じちゃうの?」

佳孝さんの背後に隠されてしまったアルバムに飛びつくように手を伸ばす。

「何かが腹が立つ。無性に腹が立つ。そんな目で見るな。写真(そんなもの)で苦しくなるんじゃない」
「もっと見せてください。見たい。学生服の佳孝さん、もっと――」

奪い返そうと躍起になって手で掴もうとすると、その手首をそのまま奪われた。

「きゃ……っ」

気付くとソファに押し倒されていて、真上に佳孝さんの顔があった。

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