囚われのシンデレラーafter storyー
「――進藤あずさ……あずさだ」
”進藤あずさ”
少し肩を上げて、何故かしかめた顔。
周りの子が笑っている中、なぜかどこか怒っているようで。
「どうして、これは怒っているんだ?」
「怒っているんじゃないんです。だから、見せるの嫌だったんですよ! これ緊張していて。笑えと言われても、どうやって笑ったらいいのか分かんなくなっちゃって。こんな訳わかんない表情になっちゃったんです! もう、これはいいでしょう? 終わりましょう!」
「何やってるんだよ。待て!」
勝手に閉じて終わらせようとするあずさの腕を強く掴んだ。
「まだ、ちゃんと見てない」
「もう!」
無理やりアルバムを押さえつけ、覗き込んだ。
あずさは横で、顔を逸らしている。
「そんなに嫌がるほど、おかしくない。可愛いよ。本当に、可愛らしい」
「そんな、慰めはいりません」
「慰めじゃない」
「もういいです。何も言わないで」
おかっぱ頭というのだろうか。
まっすぐに揃った毛先に、今より少し丸い顔。
そして、子どもらしく大きな黒目だけれど、今と同じようにどこかきりっとした視線だ。
本当に、あずさだ。
俺と出会う前の、子どもだった頃のあずさ。
「この頃はもうバイオリンを弾いていたんだよな」
「はい。弾いていましたけど」
このあずさがバイオリンを弾いている姿を想像して、勝手ににやけてしまう。
この瞬間、そこにタイムスリップして頭を撫でてやりたくなる。
もし、俺とあずさに子どもができたとして。
それが女の子だったら――。
そんなことを考えてしまって、何とも言い難い感情が溢れて来た。
まだ存在もしていないのに、なんだか胸が締め付けられた。
可愛くてかわいくてたまらないんだろうな。
こんな存在がそばにいたら、人格が変わってしまいそうだ。
「佳孝さん笑ってる。やっぱり笑ってるじゃないですか!」
あずさが怒り出した。
「違う。これは、あずさの写真を笑っているんじゃなくて、俺とあずさの――」
「え?」
「あ……ああ、いや。とにかく。すごく可愛いくて――」
と、その時、開いていたページから、見たくもない存在が俺に異様に視線を送ってきて。
少し、イラっとする。