囚われのシンデレラーafter storyー
「――これから、いろんな意味で大変になる。俺が西園寺に戻るとなれば、必然的に過去が注目されるからな」
温かい腕の中で微睡む中、佳孝さんが私の髪を撫でながら囁く。
「そうでしょうね。でも。あなたはあなたのすべきことをすれば、本当の意味で過去を乗り越えられるんじゃないですか?」
「……そうだな。そのためにも、精一杯やるだけだ。でも、あずさや子供たちにも迷惑を――」
「もう『迷惑』という言葉は使わないで。大丈夫。佳孝さんは何一つ間違ったことはしていません」
腕の中から顔を上げ、その唇に指を当てた。
「あなたは正々堂々としていてほしい。そんな父親の背中を見ていれば、子供たちにも伝わるから」
そう言うと、不意にきつく抱き寄せられる。
「本当にあずさはかっこいいな。出会ってからずっと、あずさの強さが眩してく憧れでもあった」
「佳孝さん……」
「俺も頑張らないとな」
噛み締めるように、自分に言い聞かせるように、深くそう声を漏らした。
「戦うには仲間が必要です。私たち家族は、あなたが心休まる場所で支えたい。でも、仕事の場でも支える人が必要じゃない?」
誰よりも佳孝さんを大切に思い、有能だった人がいる。
あの人なら、誰よりも佳孝さんを支えられるのではないか。
「もう、いいんじゃないでしょうか。あれから10年以上が経ちました。私たちは幸せに暮らせている」
「……遥人のことを言ってるのか?」
ゆっくりと私の肩を離し、顔を覗き込んでくる。
「斎藤さんなら、何があってもあなたを助けてくれるはず。厳しい環境で戦うにはそんな人が必要でしょ?」
佳孝さんの目が私を探るようにじっと見つめた。
「子供の頃から、二人でセンチュリーを世界一のホテルにしようって言っていたんだよね?」
「……あずさは、それでいいのか?」
私は笑顔で頷いた。
あの人の思いはわかっているつもりだ。
自分がしたことを心から悔い、責任を感じていると言うこと。
だからこそ、これまでずっと私たちの前に姿を現さなかった。
「きっと新しい関係を築ける。人生まだ途中経過。過去の出来事の何もかもが今の自分になっているんだから」
「そうだな」
新しい未来を作っていける。