囚われのシンデレラーafter storyー


「ここも、ここも。あの日から、誰にも触れられてないな……?」
「は、い……当然、です――」

私の口から西園寺さんの唇が離れても、その唇はすぐに別の場所を這う。

「この先、一生、誰にも、触らせない。あずさは、俺のものだ」

どこか意地悪だった声が、切実なものに変わる。

「――あずさが他の誰かとって、想像するたび、引き裂かれそうになった。その苦しみすら抑え込んで来た。でも、もう、二度とそんなこと出来ない。想像すらしたくない」

何かを思い出しているみたいに苦しげな表情で、きつく私を抱きしめる。

「西園寺さん――」
「あずさに触れていいのは、俺だけだ」

きつく肌を合わせて、少しの隙間も作らない。私も力の限りでその大きな背中を抱き寄せた。

「西園寺さんを、私だけのものにしたい。他の誰にも触らせたくない……」

この腕も、逞しい胸も、何もかも全部。
私のものだって、言いたい。
もう、何も考えずにそう叫びたい。

「俺の全部、あずさだけのものだ。何もかも、あずさにあげるよ」

引き寄せられるみたいに、互いの唇を重ねた。

「好きだ、あずさ」
「私も、すき……っ」
「もう、絶対に、離さない」

さきほどまで感じていた恥じらいは、西園寺さんの手で投げ捨てられて。
心も身体も、全部を曝け出した。

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