囚われのシンデレラーafter storyー
高級ホテルに来ることを考えてそれなりに身なりを気をつけて来たけれど、それでも緊張する。
各国から訪れる宿泊客たちで、ロビーは賑わっていた。フロントやドアマン、そのほかホテルで働く人たちの制服も、見ているだけで飽きない。
いつまででも見回していられるけれど、さすがにいつまでもここで立っているわけにもいかない。エントランス脇にあったラウンジに足を運ぶ。案内されて、窓際の席に着いた。
このテーブルも赤い布張りのソファも、本当におしゃれ。緊張しつつも、カフェオレとマカロンを注文した。
通りを見渡せる窓から、外の行き交う人たちを眺める。
ビジネスマン、観光客、歩道を闊歩する人たちを何げなく見ていると――。
あれ……。
通りの向こうから、こちらへと向かって来る西園寺さんの姿が視界に入って来た。
咄嗟に身体を背ける。
仕事で来たのかもしれない。まさか、西園寺さんに遭遇するとは考えていなかった。隣には女性がいる。なんとなく気付かれてはいけないような気がして、背中を丸める。
それでも、その様子をうかがわずにはいられなくて、こっそりと窓に視線をやった。
やはりこちらに近付いて来る。スーツを着た女性と何やら話をしながら歩いて来るその姿が大きくなってくる。
そして、ちょうど私の横を通り過ぎようという時、慌てて顔を伏せて。完全に通り過ぎたのを確認してから、ホテルのエントランスの方へと顔を向けた。
想像通り、エントランスから西園寺さんとその女性が一緒にロビーへと入って来る姿が見えた。
そこから距離があるから、今度はもう少しじっくりと様子をうかがえる。
隣にいる人は、意外にも日本人女性のように見えた。西園寺さんの表情は、家にいる時とはまるで違う。仕事をしている時のその顔は、少しの隙も緩みもない。